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網膜硝子体手術

※本ページの内容は京都府立医科大学附属病院眼科の許可を得て転載しています

網膜硝子体手術の種類

網膜硝子体手術は大きく3つあります。このうちレーザー光凝固術は外来で行えますので、入院の必要はありません。それぞれどんな病気に対して行われるかを列記しました。

  1. レーザー光凝固
  2. 糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症、未熟児網膜症、中心性漿液性網脈絡膜炎、加齢黄斑変性、血管姿勢黄斑症

  3. 強膜内陥術
  4. 裂孔原性網膜剥離

  5. 硝子体手術
  6. 網膜剥離、増殖性硝子体網膜症、増殖糖尿病網膜症、加齢黄斑変性、血管新生黄斑病、黄斑円孔、黄斑前膜、嚢胞様黄斑浮腫、未熟児網膜症、眼内炎(細菌性・真菌性)

網膜硝子体手術の内容

上記の分類に従って現在行われている治療法を解説します。

  1. レーザー光凝固

    レーザーといっても、コンサート等で使われているものからCDの読み込みまで様々な使い方と種類がありますが、現在眼科治療に使われているものだけでも5種類以上あります。最初にアルゴンレーザーが日本で使われたのは約25年前のことです。

    糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症、未熟児網膜症に共通しているのは、何らかの理由で網膜に血液が十分に供給されていない、という病態です。これに対して、煙突掃除の様に血管を通してやるなどして血流を元に戻してやるのが根本的な治療と言えますが、現在の医学では髪の毛より細い網膜の血管を掃除する事が未だ出来ません。そこで、物を見るのに直接関係ない部分の網膜を意図的に破壊して、栄養や酸素の需要を減らしてやるのが光凝固療法です。つまり、「間引き」による治療です。

    中心性漿液性網脈絡膜炎の病態は、これらとは違っていて、眼底の一部に点状の亀裂ができ、脈絡膜から水分が漏れてきて、網膜の下に溜まると言うものです。自然に治ることも多い病気ですが、長引くものや再発したものには、この亀裂の部分にレーザー光線を当ててやり、熱凝固により漏れを止めます。

    加齢黄斑変性や血管新生黄斑症で見られる、脈絡膜から生じた新生血管に対しても、レーザー治療が行われています。詳しくは黄斑部疾患として後述します。

  2. 強膜内陥術

    網膜剥離に対する基本的な治療法は強膜内陥術で、30年以上前からやり方はほとんど変わっていません。一言で言うと、眼球の外側から治す方法で、3つ操作をします。

    1. 網膜にあいたアナ(裂孔)を塞ぐための糊付けとして、鉛筆程度の器具で、先の部分だけが冷たくなるようなものを用いて、人工的な凍傷を裂孔の周りに作ります。やけどや凍傷が治る時、カタ(瘢痕)になることを利用します。
    2. 糊をつけたら押さえてやる必要があります。剥離している網膜を眼球壁と再び接するようにさせるため、シリコンのスポンジでできた補強材を眼の外側に縫いつけます。その部分が眼の内側に少し凹み、網膜との距離が縮まります。
    3. 網膜剥離の量が少なければ、これで網膜と眼球壁がひっつき、裂孔が閉鎖され網膜は治るので、3つめの操作はしません。網膜剥離の量が多ければ、眼球壁に小さな穴をあけ、網膜の下に溜まっている水を抜いて、網膜を眼球壁へ戻してやります。

     
    基本的にはこの操作だけですが、裂孔が大きいとか網膜をひっぱる力が強い時などには、手術の最後に眼の中にガスを入れる事があります。泡の力で網膜を内側から押さえてやるためです。

  3. 硝子体手術

    上記の強膜内陥術が眼球を切開せず網膜剥離を外側から治す治療であるのに対し、硝子体手術は内側から治す方法と言えます。昭和40年代後半にアメリカのロバート・マカマー先生が世に送り出した画期的な手術で、それまでほぼ100%失明していた増殖性硝子体網膜症や増殖糖尿病網膜症といった病気が救える様になったのです。

    ばい菌やかびが眼の中に入っておこる眼内炎も、早期に硝子体手術を行い、感染巣を取り除き、感染巣を取除き、抗生剤・抗菌剤による洗浄を行えば、視力を救う事が出来ます。

    硝子体手術は、白眼部分に、爪楊枝が通る程度の孔を3箇所あけ、人工房水(眼の中と同じ成分の水)と照明用の光ファイバー、そして硝子体手術用の器具を入れます。硝子体手術器具としては、ゼリー状の硝子体を細かく切りながら吸い出す硝子体カッターの他、網膜上に張った膜を取除く鋏やピンセット、水を吸い出すストローの役目をする器具があり、必要に応じて変えていきます。

    手術の最後には、眼の中にガスを入れることが多いです。気泡が浮かび上がる力で網膜をひっつけるので、眼底にあいている孔が一番高くなるような姿勢をしてもらうことになります。

黄斑部疾患に対する手術

  1. 黄斑疾患とは?

    今まで全く手が出せませんでしたが、この5年10年といったごく最近、やっと手術によって視力改善の可能性がでてきた疾患として、加齢黄斑変性、血管新生黄斑症、黄斑円孔、嚢胞様黄斑浮腫といった黄斑部疾患が挙げられます。

    黄斑部は、臨床的には網膜の中心約2mm程度の範囲ですが、その小さな領域で視力を決定していると言える重要な働きをしている部分です。

  2. 黄斑部手術の内容

    黄斑円孔は、以前から手術の対象であった黄斑前膜と共に、現在もっとも一般的に手術治療が行われている黄斑部疾患です。網膜表面に張っている眼に見えない程度の薄い膜を硝子体手術で取り除き、ガスを入れて孔が塞がるまで1週間ほどうつむきの姿勢をとってもらいます。

    加齢黄斑変性、血管新生黄斑症に対して行う黄斑移動術は、網膜を動かして、元気な網膜色素上皮・脈絡膜の上に黄斑部網膜を置き直せば、新生血管による網膜障害を避け、栄養代謝も改善されることにより視力の改善を図る、という最新の手術法です。この治療法の画期的な点は、約3割で視力改善が得られることです。

    経瞳孔的温熱療法は、近赤外の非常に弱いレーザー光線を1分間じわっと当てて、暖めるという治療法です。新生血管は正常の組織に比べ熱に弱く、これで小さくなることが期待できます。当科でも経瞳孔的温熱療法用の特殊なレーザー装置を設置しました。

    光線力学的療法は、特殊な光が当たると細胞をやっつける物質(ラジカル)を放出する光感受性物質を静脈に注射し、新生血管に溜まったところで、特殊なレーザー光線を当て、新生血管を退縮させる、というものです。日本でも治験が終了し今春より使用認可が下がりました。それに伴い当科でもこの新しい治療法を導入致しました。費用や入院のお話、また治療の適応にならない場合もありますので、詳細はお問い合わせください。